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理事長インタビュー
愛知県弁護士協同組合創立40周年
理事長インタビュー
奧村 敉軌理事長

 

本日は、当組合創立40周年を記念して、奥村 軌理事長から、当組合のこの10年間の「あゆみ」とこれからのあり方について、お話を伺うことにしました。

 

理事長になられたのはいつですか?また、それまでの協同組合との関わりについて教えて下さい。

 

平成16年5月に理事長に就任しました。理事長としては6代目です。
 協同組合との関わりは、今から20年前の平成4年に、当時の冨島照男理事長から「高橋正藏先生が創った協同組合なのに何故手伝わないのか。」と指摘を受け、それを機に理事にして頂いたのが始まりです。その後、平成9年に専務理事になり、平成14年には副理事長になりました。
 また全弁協の関係では、4代目の理事長であった鷲見弘先生が平成9年に全弁協の理事長になられたことを機に、サポート役として全弁協の専務理事に就任し、平成16年5月からは副理事長になっています。

 

 

初代理事長は高橋正藏先生ですが、当時のことでご存じのことは?
 私が弁護士登録した翌年の昭和46年に高橋が弁護士会の会長になり、その任期中の昭和47年2月8日に協同組合の創立総会が行われています。

 

高橋からは、当時の日弁連会長から「東京や大阪には協同組合があるし、仙台でも準備を始めている。仙台に後れをとっても良いのか。」と言われたので、自分が会長の時に協同組合を創ることにしたと聞いています。
 高橋は、組合創立後ほどなく大津橋の弁護士ビルの分譲事業をやっています。未だ協同組合の基盤も脆弱でしたので、心配性の私は高橋に「買い手がつくでしょうか。」と尋ねたことがありますが、分譲にあたって、有利な金利の貸付斡旋を行うことにより、賃料と同程度の支払で事務所スペースが確保できるというコンセプトで売り出したため、人気を博し完売となりました。
 また、高橋が特に尽力していたのは謄写事業の協同組合への移管で、謄写館をやっておられた靏野さんとの間で、何度も協議を続けていたことを覚えています。謄写事業の移管によって協同組合の基盤が確立したと言っても良いのではないかと思います。

 

 

この10年間の「あゆみ」として、協同組合の各種事業の状況をお聞きしたいと思います。まずは、今も話のあった謄写事業の状況について教えて下さい。
まず、謄写料収入は、10年前の平成13年度は7550万円で、平成17年度まではほぼ同様で年間7000万円超の売上げを維持していましたが、その後徐々に減少し始め、平成18年度には7000万円を切り、平成20年度には6025万円になってしまいました。ただ、平成22年になって検察庁の確定・不起訴記録の謄写もするようになったこともあって、同年度は6725万円まで回復しています。
 謄写料収入の減少の原因については、はっきりとは分かりませんが、引き続き、注意深く見守っていく必要があると思います。

 

 

謄写事業については、収入の減少の他にも、公募制の導入などの難しい問題があったと聞いていますが、どのような問題があったのでしょうか?

一番最初に問題が起こったのは平成17年8月のことで、日弁連から全弁協に対して「法テラスで国選事件の謄写費用が1枚20円まで支出されることになったので、国選事件の謄写については同様に1枚20円にして欲しい。」と要請がありました。
 しかし、人件費等の諸経費を考慮すると、どの単位組合でも1枚20円ではとても採算が合わないことから、この要望についてはお断りしました。この問題については、当時の村瀬尚男全弁協理事長と副理事長の私が日弁連との折衝に当たったんですが、日弁連の刑弁センターの若い委員から「やっと獲得した国選事件の謄写費用について、協同組合は協力しないのか。」と言われ、大変辛い思いをしました。
 国選事件の謄写費用の問題は、これで立ち消えとなりましたが、その後続けて平成18年11月に、日弁連から全弁協に対し「最高裁から、謄写業務の透明性・公平性を確保するため、準備ができたところから順次公募制を採る方針なので、弁護士会・弁護士協同組合に周知して欲しいという要請があった。なお、最高裁からは、公募に当たっての謄写単価の上限は1枚20円とするいう話があった。」という連絡がありました。
 

これに対してどのように対応したのでしょうか?

多くの単位組合で収入の柱になっている謄写事業の存亡に関することですので、全弁協ではプロジェクトチームを設置して検討しましたが、訴訟記録の謄写は、弁護士の業務に直結するものであり、迅速かつ確実な謄写が不可欠でああることから、やはり弁護士会や協同組合が実施することが望ましいということで、平成19年1月に日弁連に対して「公募制の撤回を求めるよう最高裁と交渉して欲しい。」という内容の要請書を提出しました。 しかし、東京の協同組合は謄写事業を行っておらず、大阪もごく一部分を行っているに過ぎないということもあって、日弁連の協力は殆ど得られませんでした。また、全弁協の中でも、両組合の力を十分には借りられない状況でしたので、勢い愛知県が前面に立って対応することを余儀なくされ、私がプロジェクトチームのトップとして日弁連と折衝しました。
 最高裁の公募制のポイントは、「裁判所の指定する箇所の全てでの謄写の実施」と「謄写単価の上限は1枚20円とする」ということであり、何れも小さな単位組合はもちろん、当組合でも対応は極めて難しい状況でしたが、少なくとも謄写単価については、「1枚20円で謄写できるルート」が確保されれば最高裁の理解が得られるのではないのかと考え、1枚20円で謄写できるようコインベンダー付きの謄写機を置くことを提案し、日弁連執行部に最高裁との折衝をお願いしました。
 その結果、公募制の撤回はできませんでしたが、「1枚20円でできるルートが確保されれば、謄写代行の場合の謄写料金については特に条件は付さない。」ということで最高裁の了解が得られ、愛知県でも平成19年12月にそういう内容の公募が行われ、当組合は平成20年1月に企画提案書を提出し、謄写事業者として無事採用されるに至った訳です

 

 

大変だったんですね。
本当に大変でした。幸い、当組合については裁判所の指定する箇所の全てにコインベンダー付きの謄写機を置く体力がありましたので、公募に応募することができましたが、遠方の支部が沢山あるようなところの単位組合では公募に応募することすらできず、公募制導入を機に謄写事業を止めたところもあり、問題になってます。
 それから、忘れてはいけないのは、今後も5年毎に公募が繰り返されていくということです。謄写事業は当組合の基盤ですので、引き続き責任を持って迅速かつ確実な謄写を行い、裁判所からの信頼を得ていかなければなりません。
 

 

 

他の収益事業についての現状は、どうでしょうか?

他の収益事業のうち保険事業については、この10年間で大きな変化はありません。ただ、組合員は増加している訳ですから、大きな変化がないこと自体が問題です。全弁協が取り扱っている同種の保険があることなど、難しい面がありますが、当組合で取り扱っている保険の有利性をピーアールして加入者の増加に努める必要があると思います。

購買事業はどのような状況でしょうか?

購買事業のうち、物品販売事業については特に問題はないと思いますが、手数料事業については、色々な問題がありました。
 まず、平成22年の夏に三菱UFJニコスから「ロイヤーズカードによるタクシーチケットの扱いは年内で廃止する」という通知がありました。ほぼ全てのタクシーで利用できたこのチケットの利便性は高く、組合員から「法人カードではタクシーチケットの扱いが続けられている。何とかならないか。」という声が挙がりましたので、全弁協の理事長に話をして、全弁協理事長名義で三菱UFJニコスにタクシーチケットの扱いの継続を求める要請書を提出しましたが、「弁護士というだけで法人扱いはできない。」と、つれなく断られてしまいました。
 そればかりか、平成22年の秋、突然、三菱UFJニコスから「現在弁護士の提携カードとしてロイヤーズカードと弁護士DCカードを発行しているが、両方続けることは困難なので、来年3月をもってロイヤーズカードを廃止することにしたので承知されたい。」という通知がありました。突然一方的に廃止と言われても困ると言って、ロイヤーズカードの存続を依頼しましたが、三菱UFJニコスからは「既に社内で決定していることであり、弁護士DCカードに切り替えてもらえば済むことだ。」と言われ、聞いてもらえませんでした。
 それで、ロイヤーズカードを利用されていた組合員にできるだけ弁護士DCカードへの切り替えをしてもらうようにするため、三菱UFJニコスに対し「ロイヤーズカード廃止の案内に、弁護士DCカードへの切り替えを勧める文章を分かりやすく書いてもらいたい。」という依頼をするとともに、2度に亘り理事長名で弁護士DCカードへの切り替えの案内を出しました。しかし、肝心の三菱UFJニコスから廃止の案内文は非常に分かりにくい内容で、特に弁護士DCカードへの切り替えの提案は注意して読まなければ気がつかない程度の記載だったことから、弁護士DCカードへの切替は十分に行われず、多くのカード会員を失ってしまいました。

 

 

何か対策は考えておられますか?
まず、タクシーチケットについては、名鉄タクシーとの提携チケットの販売を開始しました。また、弁護士DCカードへの切り替えについては、この40周年の記念事業の一つとして行うホームページのリニューアルに当たって、特約店の商品のオンライン購入とカード決済の機能が付加されることになっていますので、この機会にキャンペーンをやって何とかカード会員を増加させ、手数料収入を回復したいと思っています。

 

 

文化厚生事業や教育情報事業の状況はいかがでしょうか?
文化厚生事業としては、人間ドック検査料の補助や長島ジャンボ海水プール等の補助券発行や歌舞伎等のチケット販売を行っていますが、何れも好評で利用者は増えています。また、教育情報事業としては、弁護士会の委員会が作成した各種のマニュアルやハンドブックの中で全組合員の利用に資するものの出版をして組合員に配布したり、書籍や弁護士手帳・弁護士業務便覧の無償貸与などを行っています。
 これらの事業は、まさに「相互扶助」という協同組合の目的に沿うものであり、組合事業の根幹だと思いますので、当組合の売上げが伸び悩んでいても、できるだけ現状の規模を維持して行くべきだと思っています。

 

 

特約店はこの10年間でどんどん増えているようですね。現状を教えて下さい。
特約店は平成13年で64店でしたが、平成16年で82店、平成23年には119店になり、この10年で倍近くに増えました。
 特約店の加入審査に当たっては、もっと厳しくチェックすべきではないかという意見もありますが、最終的には組合員が利用の有無を選択するので、不適切なものを除けばあまり厳しくしなくても良いのではないかという意見の方が多数で、特約店の増加傾向が続いています。
 ただ、特約店の増加に伴うほどには手数料収入は増加していません。これは、組合員が特約店を利用していないことを示すものであり、当組合にとっても特約店にとっても好もしいことではありませんので、特約店の利用の拡大を図って行かなければいけません。その為には、特約店側の情報提供や営業努力が不可欠だと思います。
 先程も言ったとおり、現在40周年記念事業の一つの目玉として当組合のホームページのリニューアルを行っていますので、特約店にもホームページ等を活用して組合員の心を動かすようなサービスを宣伝してもらい、特約店の利用が拡大することを期待しています。

 

 

参加型行事として、若手を中心に企画実行している秋祭りが挙げられますね。また、若手向けに新たな貸付制度を導入したと聞きましたが。
まず秋祭りについては、平成21年に弁護士会の会館改造があり、従来行っていた2階の会員控え室では秋祭りが実施できなくなり、継続するとすれば5階ホールでやる以外にないということになりました。とは言え、5階ホールでやるとなると、従来の内容ではガラガラという状態になる可能性があるということで、色々と考えた結果、これを機に5階ホールの広さを生かして、若い組合員の皆さんに若者の感覚で秋祭りを企画・実行してもらったらどうだろうかと思い、理事会に上程して意見を聞いたところ、予算規模が大きくなることを危惧する意見もありましたが、「上限250万円までなら一度若い組合員に任せてみよう。」という意見が殆どでしたので、若い組合員に任せて5階ホールで秋祭りをやってもらいました。幸い、5階ホールが溢れんばかりの参加者があり、沢山の方から「楽しかった。」という声を掛けてもらいました。
 250万円という金額は、当組合にとって決して少ない金額ではありませんが、私は、秋祭りを通じて将来当組合を担っていってもらう若い人材を増やす意味では、大きな機会だと思っており、実際この秋祭りを通じて若いの組合員が協同組合を身近なものとして感じてくれ、その後、秋祭り以外の当組合の活動にも関与してくれています。行事を通じて帰属意識を持ってもらい、それが協同組合の発展につながるのであれば、費用を使ってもそれだけの価値は十分にあると思っています。また、秋祭りには多数の事務所事務員も参加してくれているため、事務員にも協同組合を知ってもらえる機会となっています。
 次に、若手向けの貸付制度ですが、弁護士人口の増加により若い弁護士を取り巻く状況は厳しさを増しています。弁護士会でも色々な取り組みをされていますが、協同組合にもできることはないかと考え、昨年12月の理事会で、新規登録組合員について「100万円を限度に、同金額に達するまで複数回にわたって無利子で貸付を受けることができる。」という短期小口貸付制度を導入しました。ささやかな取り組みですが、お役に立てばと思っています。

 

 

協同組合のこれからのあり方についての思いを聞かせてください。
私は、間もなく理事長を退任させていただく予定ですので、偉そうなことは言えませんが、当組合を支えていてくれている皆さんには、これまでの40年の歴史を十分認識しつつも、社会の変化に応じた新しい取り組みもしてもらって、本当に「弁護士の仕事と暮らしのパートナー」と言ってもらえるような協同組合にして行っていただきたいと思います。
 そのためには、更なる購買事業、特に特約店の充実と利用拡大を図っていくことが重要だと思います。情報化社会で、インターネットで何でも取り寄せができる時代ですから、特約店の充実とか利用拡大といっても簡単ではないと思いますが、秋祭りを通じて若い組合員と特約店会の人達のつながりもできていますので、双方の若い人達で工夫をして、どんどん新しい取り組みをして行ってもらいたいと思っています。
 また、大阪弁護士協同組合では、若い組合員が中心になって、失敗を恐れず楽しみながら出版事業をやっており、トータルで収益を挙げておられるようです。当組合でも大阪のやり方を検討するなどして、出版事業を収益事業の一つとしてやるようなことも考えてみたらどうかと思います。
 いずれにしても、当組合の更なる発展のためには若い組合員の力が不可欠です。若い組合員の活躍の場も更に広げて行って欲しいと思います。